キ/薬姫/好きのかたち
≪6/6≫
* * *
少しずつ。
少しずつ。
少しずつ。
砂時計の砂が落ちるように、息苦しくなっていった。
窓一つない地下。
低い天井。
押し潰されそうに重い空気。
手首を切ると、少しだけ楽になれた。
ひつじに毒をやると、自分を殺すことができた。
ねぇ。
笑顔でかわさないで。
あやさないで。
あしらわないで。
───ねぇ!
変わってしまったのはどっち?
写真の青い空を欲しがったアタシか。
アタシを支配しようとした矢矧か。
変わってしまったのはどっち?
また。
会えるかな。
薔薇をくれた。
ひつじをくれた。
ゆびきりをしてくれた。
あなたに。
“好き”の。
別のかたちを伝えに。
了
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キ/薬姫/好きのかたち