/BR/祐輔
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 それは、タイトルもない。
 十八年前の全国音楽コンクールで、七歳の少女が奏でた曲だという。
 この曲が、今日結婚する二人をどのように巡り合わせたのか、祐輔たちは知らない。
 ただ二人が喧嘩しているときも、笑い合っているときも、常にこの曲を意識し続けていたことは、分かっている。
 七歳の少女が作曲したとは思えないこの優しい曲に、慎也たちは二人だけの題名を付けたと言っていた。アルファベット三文字。音楽家の巨匠、そのイニシャルを───。
 その由来も意味も知らない。知らなくていい。でも。
 そんな風に、一つの音楽をきっかけに出会った二人が、どうか幸せでありますようにと。
 祈った。

 ピアノとヴァイオリンの音が、教会の鐘と共に響いていた。

 初夏を感じさせる青い空の、暖かい日だった。



end

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/BR/祐輔