/薬姫/無落日
≪1/3

「ちょうだい」
 ぽつり。芯の通った声で恵は呟いた。
「…これほしい。ね? いいでしょ?」
 西山は苦笑して、それを取り上げた。
「だめ」
「どうしてっ」
「ネガ無いんだよ。見たいときはいつでも見せてやるから」
「やだ!」
 ひつじを抱えたまま、西山の手にあるものを取り返そうとする。
「ちょーだい、ちょーだいッ!! ほしい!」
「こらっ、恵」
「やだっ、ぜったい、もらう!」
「だめだって」
「ぜーったい、ほしい!」


≪1/3
/薬姫/無落日