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「店長」
 少女はカウンターの一番端に座った。彼女は大声を出すのが苦手で、この呼びかけも届かないかもと心配したが、店長は気付いてくれた。
「や。みゆきちゃん、こんばんわ」
 店長は愛想良い表情を見せた。
「こんばんわ。…どうでした?」
「ついさっき、五人目が来たよ。五人とも見所があると思う」
 バサッ、と店長は叶みゆきにファイルを手渡した。勿論、例のBGMに関して尋ねてきた五人のデータだ。正確に言うと四人のデータ、プラス、五人目の名前。五人目は下手に知り合いなだけに、詳細は後で書き足そうと思っていたのだ。
「五人目のことは今夜中にメールするよ。鼎のところでいい?」
「あ、私のところにもc.c.いただけますか?」
「了解」
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
 用件が済み、とっとと帰ろうとするみゆきを店長は呼び止めた。
「みゆきちゃんも大変だねー。あの堅物オヤジに捕まって。…あー、みゆきちゃんって十五歳だったよね? 本当はこの時間は立ち入り禁止なんだよー。鼎によく言っておくからさ。こんな時間に、女の子寄こすなら自分で来いって」
「おじさんは顔が知られてるから。下手に動きたくないそうです」
 申し訳なさそうに苦笑して、みゆきは「PREDAWN」を後にした。

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