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「史緒、留学するって!?」
 篤志は階段を昇ってくるなり史緒の部屋へ直行した。僕の部屋の前を通り過ぎる足音を聞いた。
「そうよ、あなたも文句言いに来たの?」
 苛ついたような声色を隠さずに史緒が答える。も、というのは、先日、史緒の留学話を聞いた和成が夜中に電話してきたからだ。反対してるわけでは無かったけど、あまり良く思ってないような態度だったらしい。ついでに阿達政徳からも一言二言あったようで、その辺り、史緒は少し神経質になっていた。
「いや…」篤志は口ごもる。
 なによ、と史緒は詰め寄るよる。
 篤志は笑った。
「がんばれよ」
「…」
 史緒は予想外の台詞にびっくりしたようで息を飲んだ。
 僕は2人のその会話を立ち聞きしていた。
 僕にとっても、篤志のその台詞は心底意外だった。篤志の狙いは史緒の傍にいることだと思っていたから。

 8月、史緒は本当にアメリカへ飛んだ。
 最後まで反対していたのは和成だった。

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