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2人は大通りを駅の方へ歩いた。
「たかがナンパ野郎にやりすぎたかな。あたしたちに絡んでくるってことは素人だろうし」
藤子の台詞に史緒は眉を顰めた。気に障ったようだ。
「その、私たち、っていうのやめて」
すると藤子は鼻で笑う。
「今更、無関係でーっす、って顔しないでね? 事実、あんたと連んでるって大っぴらになってから、奇襲されることも減ってるんだから」
「どういう因果関係?」
「命も惜しいけど、社会的抹殺も恐いってことでしょ」
「…なぁに、それ。藤子に危害を加えたら私が黙ってないってこと? …馬鹿言わないで、そこまで義理堅く無いわ、それに藤子に何かあってもそれは完全に自業自得じゃない」
「あらま」肩を竦めておどけた。「───でも、あたしはやるよ」
「ん?」
「史緒に危害を加えたらあたしが黙ってないってコト」
史緒は深々と溜め息を吐いた。
「……藤子と連んでるって大っぴらになってから」「うん」「組合内での圧迫が減った気がするのよね」
「さすが情報屋さん、耳はいいみたいね。文隆と真琴はピリピリしてそうだけど」
「───…私だって、藤子の仕事に嫌悪感を抱いてないわけじゃないのよ?」
「うん、それは分かってる」
史緒は足を止めた。
「そのうち冗談じゃ済まなくなる」
倣って立ち止まった藤子は振り返り、平然と言い放った。
「人殺しが死を恐れてどうするの?」
「私は、恐いわ」
きっかり3秒。
「───。…へぇ」
史緒は目を見開いた。その3秒で確かに藤子は史緒の言葉の意味を理解していた。そのことに驚いた。
藤子はいつもの笑顔で史緒の顔を覗き込む。
「あんたのそういう、勝手に何か抱えて勝手に孤独に浸ってるトコ、好きよ」
「そりゃどうも」
史緒は複雑な表情で苦笑した。そしてまた、歩き始めた。
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