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あたしたちはリレーをしている。
大勢のヒトが集まる街中にいるときに、とくにそう思う。
馴染みのショップのお姉さん。アクセ売りのお兄さん。通り過ぎるカップルや学生さん、子供たちや年配のヒトとか。話をしたこともない、視線さえ合わせたことのない赤の他人。そこに大きな流れを感じる。
ここで生きているみんなで、なにか大きなものを動かしてるんだと思う。
それはたぶん、過去から渡り、未来へ継ぐもの。
今、通りすぎた小学生の女の子を殺しても、リレーは止まらない。ここであたしが視界に入るヒトすべてを殺してもきっと流れは止まらない。少しの歪みを与えるくらいで、それはずっと後になれば意味が無くなってしまう程度の、些末なものだ。
たとえそれを実行しても、あたしの腕では全部殺す前に取り押さえられてしまう。でもときどき、やってみたい衝動に駆られることはあった。みんなはそんな風に思わないのだろうか。
街の景色を見るのは好き。ゆったりとした大きなリレーを見ているようで、その壮大さに目を奪われる。大勢の人の流れも、リレーの一部。あたしにとっては景色でしかない。全体を見るのは好きだけど、それら個々に興味なんて持てないし、それらのひとつを殺しても構わない。
殺しても、あたしが見る景色に大きく変わりは無いから。
2年半前───
「私は、國枝さんといろいろ話してみたい。仕事以外のことも」
なに言ってるんだろう、この子。
あたしのコトはちゃんと教えてあげたのに。
どうしてこっちを向くんだろう。
あんたはあんたの場所でリレーに、そうと気付かないまま参加していればいいのに。
「…どうして、そんなこと言うの?」
「國枝さんは、人を殺して罪悪感は無いの? 人を殺してなにか得られるの? それは具体的になに? 私はそれが知りたい」
ああ、この子はバカなだけかも。
無知で考え無し、あたしと付き合うリスクも想定できない。
そんな目で見ないで欲しい。なにかを期待している? 正直、気持ち悪いんだけど。
景色の一部と馴れ合うことはしない。同じ景色を見ることなんて、ぜったい無いんだから。
でも。
「え〜? そんなこと、一言じゃ答えられないよ」
バカな子は嫌いじゃない。
「ねぇ、阿達さん。じゃあさ」
短い道程、それは遊んで楽しむものだ。
「友達ごっこしよっか」
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