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「本当に、いいの?」
 どこかから緑の匂いがする。
 窓の外を見ることはできなかった。まだ、体を動かせなかった。
 喋ることも辛い。
 でも、カーテンを揺らして香る、外からの空気を楽しむことができた。
「…そう、戻ってくるのね」
 初夏の風が、病室の中を通りすぎていく。
「おねがい」
 シーツに沈む指に水滴が落ちる。
「櫻がちゃんと自分のために生きているか。史緒が幸せになってくれているか。そしてもちろんあなたも、あなたの思うとおりに生きられますように」
 この指を伸ばして、その頬に触れられたらいいのに。




 あたしの代わりに未来で見てきてね
 母はそう言って微笑う。後悔と羨(うらや)みと、涙を湛(たた)えた瞳で。



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