キ/GM/御園
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「人を捜して欲しいんです」
時間通りにやってきた依頼人はそう切り出した。
2人の女子大生。珍しい取り合わせだ。
「三ヶ月前から捜し始めて…このテの事務所を十件以上回ったんですけど、全部断わられて…そんな少ない情報からじゃ無理だって言われて…。あの、お願いしますっ。どうしても会って、お礼を言いたいんです」
そんな風に情に訴えれば調査結果が変わるとでも信じているのだろうか。これは目の前の彼女らを責めているわけではない。依頼人というものの大半は感情的な台詞を残していくものだ。
真琴は頬杖をついて事務的に訊いた。
「うちの事務所にはどうやって?」
「先週、伺った興信所の方に紹介されました。…ここは、人捜しには強いからって」
「なんてトコ?」
依頼人のひとりが答える。その回答を自分の記憶と照会するより先に真琴は口にした。「まりえ」
そして返る声がある。
「TIAの参加団体のひとつです。格下といえば格下ですけど、比較的こちらには協力的です」
「ふーん。───…ああ、どうぞ楽にしてください。今、お茶を淹れますから」
そう言って所長自ら席を立った。
人(所在)捜し。
用途種別は多々あるが、例えば。
とある電話番号がひとつ、ここにあるとする。その電話番号がどこの誰のものか、調べるのは比較的容易だ。まずその番号を見ただけで、地区は割り出せる。問題は下4桁だが、何の事は無い。その番号に直接電話をかけて、「○×運送です。お宅宛てに荷物が届いているのですが住所が薄くて読みづらいんですよ」と言えば大抵は教えてくれる。実際、この手を使っている調査機関は多々ある。
携帯電話の番号の場合。事業者識別番号は総務省が公開しているのでキャリア(電話会社)はすぐに判る。そして大抵の調査会社は各電話会社に内通者を確保している。依頼人からもらう調査料のうち数パーセントをマージンとして渡せば、内通者から契約者名と住所くらいはすぐに得ることができる。───ただ、これがPHSになると調査料金が割高になる場合が多い。これはPHSが後発のサービスなだけに、セキュリティが確立してから設立された会社が多いため、内通者を得るのが困難だからだという。
───電話番号というある意味ユニークナンバーともいえるものを例にとったが、このような捜索条件がある調査は本当に容易いものだ。
以前、阿達史緒が風貌描写だけをたよりに依頼してきたことがあり、信じ難いことだが、見つけてしまったことがあった。それだってかなり無茶をして候補を数千に絞ったのだ。その後の史緒の根気に運が見方しただけのこと。
人捜しを依頼するなら、いかに客観的なデータを提示できるかが成功の鍵となる。
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