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 由眞のオフィスに来客用の椅子はない。部屋の中央に由眞のデスクがあり、他には調度品があるくらいで室内は閑散としている。隣の部屋から椅子を持ってきなさいと由眞は言うけど、藤子は由眞のオフィスの窓からの景色が好きだった。それなので今日も窓際に立ち、窓の外を見ている。
「なにかいいことでもあったの?」
 由眞が訊いた。
「え? なんで?」
「さっきから笑ってるから」
 藤子はきょとんとする。しかし思い当たることはある。自覚もある。はにかんで笑った。
「あたしの中では由眞さんが一番なんだけど、でもいま、あたし、恋してるみたい」
「そう、素敵ね」
「だって、この人になら殺されてもいい、ってすごくない?」
 それは恋心とはいえない、と由眞は言おうとしたがやめた。恋心の定義など人それぞれだ。
 そして、藤子がそう思うのは相手が復讐者だからだ。それも普通の恋愛感情とはまったく違うのだが、藤子に区別はできない。
「そういうわけで、早速、明日、ゲットしてきます! 報告は後日に!」
 藤子は敬礼して宣言すると、由眞のオフィスから出て行った。

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