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04.12/20(月)15時

 藤子が図書館に入ると、カウンターにはいつもどおり谷口葉子が座っていた。葉子はちらりと顔をあげると、いつもどおりあからさまに嫌な顔をする。
「葉子さん、こんちはー」
「…早かったな。連絡してから30分経ってないぞ」
「ちょうど近くにいたから。で? お願いしておいたことは?」
 催促をすると葉子は辺りを窺った。平日のこの時間は人が少ない、それでも慎重に、葉子は封筒を差し出した。「どうぞ」
「半日でレスくれるなんて、さっすが葉子さん」
「アウトラインだけでいい、納期重視という注文だったからな──おい」
 封筒を受け取ってそのまま封を切ったら避難の目を向けられた。
「まーまー、誰もいないし、いいじゃん」
 怒鳴られるかと思ったが場所をわきまえたらしい。葉子はそのかわり大きく舌打ちした。
「…おまえの同業で通称が鈴木」
 と、嫌そうな声で言う。今回の調査対象について。
「でも鈴木は殺し屋じゃないぞ」
「へぇ」
「始末屋、だな。実際、調べた限りでは鈴木が殺しをしたことはない。仕事の遣り方は主に“素手”。仲介人は通したり通さなかったり。仕事の絶対数は少ない、兼業なんだろう。成功率だけならランクは上の中。そのあたりは青嵐に訊いたほうがいいんじゃないか?」
「セーラくんはお金じゃ動かないから」
 書類を封筒に戻してバッグにしまう。
「ありがと、葉子さん」
「ああ、早く帰れ」
「あっ、史緒になんかある? これから史緒のとこいくんだ」
「まだ阿達さんと付き合ってるのか?」
「すごく嫌そうに言わないで」
「正直、嫌だな。阿達さんの保護者もここに通ってるんだ。合わせる顔がない」
「史緒の保護者って?」
「阿達さんの親戚」
「へ〜。あ、もしかしてこのあいだ会った男の人かな。今日会えるかも」
「おい」
「おっと、そろそろ行くね。じゃあね〜」
 いつものように騒々しく大きく手を振って、藤子は図書館を後にした。

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