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関谷高雄はそっとドアを開けて寝室を覗いた。
廊下からの光が室内に差し込み、ベッドの上に光の筋が伸びる。薄暗い部屋の中、ベッドの端に和代は座っていた。肩を強ばらせて。
「篤志はアパートへ戻ったよ。会わなくてよかったのか?」
返事は待たなかった。高雄は歩み寄り、同じくベッドに腰を下ろす。
「どういう結果になろうと、会えないわけじゃないんだし。なぁ?」
背中の向こうから声が返った。
「……でも、…もう、この家には帰ってきてくれないかもしれない」
「じゃあ、引き留めるかい?」
「…いじわるだわ」
むくれるような声に高雄は笑って返して、天井を仰いだ。
「もう12年だよ。あの日から」
「…そうね」
「ちゃんと終わらせよう。曖昧にしないで、中途半端にしないで、最後まで見届けて、咲ちゃんのいたずらを終わらせよう。───篤志が決めたことを受け入れるために、ここで待っていよう?」
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