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『ねぇねぇ、ここにハルがいるのー?』
 駅からの道を跳ねるように進んでいくノエルに並んで蘭、少し遅れて健太郎と祥子がビルに挟まれた歩道を歩いている。
 アダチのビルはもう近くだった。
「っていう話だけどな」
 三佳が言うには、今日、史緒は櫻に呼び出されてここに来ているはずだ。櫻に会うのにここへ来るのは間違っていない。と言っても、健太郎達が入れる場所ではないが。
「史緒とも連絡つかないし、外で待ってるしかないけどな」
 ビジネス街にこの集団はえらく場違いだった。どう見ても全員10代だし(ノエルは20代半ばのはずだがとてもそうは見えない)、その上、蘭は制服、健太郎と祥子だって仕事に行くような服装ではない。ノエルがいるから、観光に来たお上りさんとでも周囲からは思われているかもしれない。こんなビルばかりの所に観光に来るかはさておき。
『すごーい、たかーい、おおきー』
 上を向いて歩くのが危なっかしい。ノエルは軽快な足取りで、機嫌良くあちこちを見て回る。
「ノエルは仕事でこういうとこよく来るんじゃねーの?」
『ん〜、無いことも無いけど、場所によってやっぱり全然違うもん。それに、あたしが呼ばれるのは大抵山とか海とかの現場なの。あとは都会から離れた研究所(ラボ)とか。前に日本(こっち)に来たときも海沿いで、ていうか海上の実験で。あのときは船酔いが酷かった〜。冬だったから寒いしさぁ』
「街を歩いたりっていうのは、あんまり無いの?」
『うん。こういうトコほとんど車で移動。こんな風に楽しくお喋りしながら歩くなんてはじめてかも!』
『櫻さ…じゃなくて、ハルさんとは?』
『デートはよくするけど、楽しくお喋りはなんか違う気がする。ハルの場合』
『あはは』


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